【プレスリリース】アサノ不燃、断熱材に不燃木粉をパックして「不燃性能」を確認
~火災事故が絶えない硬質ウレタンを植物資源の力で不燃化する技術を開発~
株式会社アサノ不燃(本社:東京都江東区、代表取締役:浅野 成昭)は、硬質ウレタン断熱材の表面に不燃木粉をパックして塗布することで、国土交通大臣「不燃材料」認定基準の性能を満たすことを確認しました。当社は、日本で初めて不燃木材を開発した先駆者として、不燃木材を製造する際に発生する不燃木粉のサステナブルな活用法を研究する中で、断熱材の防炎性能を高める手法として採用し、成功いたしました。今後、正式な国土交通大臣「不燃材料」認定取得の申請を予定しています。
試験体は、合板(12mm)の上に、硬質ウレタン(23mm)、その上に不燃木粉パック(平均10mm)を塗布しました。建築基準法に基づき、コーンカロリーメーター試験による発熱性試験(福井県工業技術センター)を実施。国土交通大臣「不燃材料」認定基準に合格する性能を確認しました。加熱後、変形などの損傷はなく、避難上、有害な煙やガスも発生しませんでした。
■開発の背景
2050 年脱炭素(ゼロカーボン)化が国の目標とされるなか「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー住宅)」が推奨され、ウレタン系の断熱材が広く普及しています。高い断熱性に加え、耐水性もあり、軽量のため施工性も良いことが特長です。さらに、気密性が高く、隙間なく施工できるため、長期間の効果が持続しやすいメリットがあります。しかし、建設作業中に溶接火花などから引火しやすく、ひとたび引火すれば、無色透明な有毒ガスが数分で発生します。建物火災の場合、内部でくすぶり続け、一気に爆発的な燃焼が発生するリスクもあります。また、断熱材は、外壁と内壁の間に施工されるケースが多いため、延焼しやすく、消火しにくいことから、膨大な被害や人命が失われる事故が起こっています。(硬質ウレタンフォーム火災事故例:日本ウレタン工業協会、他)
硬質ウレタンは幅広い用途で活用されており、この、耐火性能が著しく低い点に注意しなければなりません。そこで、当社では硬質ウレタンの防火性能を高める開発を2022年より開始。まず、最初にアプローチした手法は、専用の薬剤を開発し、硬質ウレタンの表面に処理液を塗布する方法です。この技術により、プラスチック材料の難燃性を評価する「UL94規格」において、最も難燃性が高い[5V-A]を第三者機関で確認しました。次に、目標とする防炎性を国土交通大臣「不燃材料」基準に定め、さらなる研究・開発を進めました。まずは「合板の防炎性能」をクリア、次に、「準不燃材料」基準をクリアと一歩ずつ着実に性能を高めることに成功し、このたび、「不燃材料」の認定基準に合格することを発熱性試験にて確認しました。
■不燃木粉3つの利点を活かした断熱材が実現
当社の不燃木粉には、不燃化するために使用する薬剤ホウ素が木粉細胞内にまで含浸されているため、3つの利点があります。
① 優れた延焼防止効果
② 防腐・防虫・防カビ効果
③ 燃焼によるCO2発生量の低減
硬質ウレタンは、シロアリ被害を受けるケースが多いことから、防虫・防蟻効果が高いホウ素により、食害の予防にもなります。
さらに、一般的な木粉の特長でもある、吸水性や消臭性、調湿性、断熱性などもあわせもっているため、不燃木粉をペースト状にして、硬質ウレタンの表面に塗布することで、人や地球環境にやさしい断熱材が実現します。植物資源を活用することで、火災時の延焼を防ぎ、安全で健康、快適な住環境や空気質を実現できるサステナブルな建築資材と言えるでしょう。
■試験体の発熱性試験の結果について
不燃木粉パックを塗布した試験体に、通常の火災初期による熱(約750℃)を20 分加えて、下記3 つの要件を満たすことができるか、という発熱性試験を建築基準法に基づきコーンカロリーメーターにより実施しました。
(1) 燃焼しないものであること
(2) 防火上有害な変形、溶融、き裂、その他の損傷を生じないものであること
(3) 避難上有害な煙またはガスを発生しないものであること
試験時間:20分 輻射熱:50.0kw/㎡ ヒーター温度:766.6℃ [福井県工業試験センター]
試験の結果は、加熱開始後20 分、これら3 つの条件を満たすことができ、不燃材料の性能基準である総発熱量8MJ(メガジュール)/㎡以下に対して、試験体の総発熱量は、1.29MJ/㎡であったため、国土交通大臣「不燃材料」認定基準に合格する性能を確認しました。さらに、燃焼開始から約8分間は発熱量の増加は微量の推移で、表面の不燃木粉パックや硬質ウレタンは、黒く炭化するのみで、延焼することはありませんでした。
今後、不燃木粉パックの断熱材をパネル化すれば、製品の品質一定化も可能になるため、大きな火災事故を防ぐことの一助となります。建設会社様や断熱材メーカー様、商社様、施工会社様と共同で製品開発を検討しています。