不燃木材に使用する薬剤
不燃木材に使用されている薬剤は、リン酸系とホウ酸系を混合したもの、また、そのどちらか一方の薬剤を多く使用し、含浸機で減圧、加圧を繰り返しながら、薬剤を浸み込ませる方法が一般的です。
しかし、薬剤にはそれぞれのメリット・デメリットがあり、それは不燃木材の性能に直結しています。
【リン酸系薬剤のメリット】 液状のため、溶けやすく製造しやすい
【リン酸系薬剤のデメリット】 液だれ、表面に薬剤が出て濡れたようにベタつく
薬剤が木材内に定着しない
木材内の金属が錆びる原因になる
リン酸系の薬剤は、水に溶けやすい性質があり、木材に浸み込ませることが容易ですが、水分と結びやすく、木材表面に水滴がつくなど、液だれがおきます。薬剤が外に流出してしまうため、急速に不燃性能が低下します。具体的には、約20日間で薬剤が70g/㎤ も減ります。さらに、1か月経過すると不燃性能が維持できなくなります。薬剤が液体であるため、これは避けられない現象です。
溶脱性能確認試験 (JIS A9011:2020 「難燃薬剤処理木材の品質管理基準等の検討、事業報告書」より)
【ホウ酸系薬剤のメリット】 防腐、防虫、防カビ効果がある、安全性が高い
木材内の金属が錆びにくい
参考:NPO法人ホウ素系木材保存剤普及協会「素晴らしいホウ酸塩」
【ホウ酸系薬剤のデメリット】 白華。固形のため水に溶けにくく含浸しにくい
ホウ酸は鉱物資源です。鉱脈のほかにも、海水、淡水、岩石、すべての植物、土壤などに存在する”自然素材”のため、安全性が高いです。ただし固形のため、水に溶けにくく、含浸しにくい薬剤です。また、不燃木材の表面に薬剤が結晶化して、白い粉が付着した状態になることがあります。拭き取れば消えますが、一時的にでも見栄えが悪く、湿度が高い場所では、白華を繰り返し不燃性能が低下してしまうリスクがあります。
さまざまな薬剤を研究開発し、ホウ酸系の薬剤を選択しています。主剤の95%をホウ酸塩にすることで高い防火性能を保持しています。ホウ酸は溶けにくい性質で一般的な水溶液は濃度20%程度ですが、当社は独自に研究開発を行い、ホウ酸塩の水溶液を60%高濃度にすることに成功しました。
デメリットである白華現象の防止のため、不燃木材の表面を処理後、着色塗装などを行い、さらにその上に独自に開発した専用塗装を施すことで、白華現象の抑制に成功しました。この専用塗装により、薬剤を木材の中にとじこめることができます。また、ホウ酸塩のメリットである防腐、防虫、防カビ効果に加え、燃え広がらず、煙と有害ガスを抑える、確かな不燃性能を長期にわたって確保しています。
現在、素材ごとに最適な薬剤、かつ、製造ノウハウの活用で、さまざまな不燃製品の製造が可能になっています。

薬剤の違いによる「液だれ」について
乾湿繰り返し試験により、無処理材、リン酸処理材、ホウ酸系処理材の質量変化について確認しています。
溶脱性能確認試験 (JIS A9011:2020)
「難燃薬剤処理木材の品質管理基準等の検討事業報告書」(公益財団法人日本住宅・木材技術センター/平成30年3月報告書) 第3章-3.2 屋内環境を想定した難燃薬剤の溶脱性能確認方法に則り、試験を自社で実施

■乾湿繰り返し操作による質量変化 結果
*無処理材:加湿後・乾燥後の質量ともほぼ同じであり、5回繰り返しでの質量変化は見られない。
*リン酸アンモニウム材:乾湿繰り返しとともに乾燥後の質量が徐々に低下。この原因は、加湿のたびにDAPの潮解現象が起こることで、表面に発生した液滴が重力により下に垂れ落ち、液だれ現象が発生したため。
*セルフネン材(薬剤主原料はホウ酸塩とホウ砂):繰り返し3回まで乾燥後の質量増加があり、その後、質量はほぼ一定。質量が増加した要因は、当初、薬剤成分が無水結晶状態であったものが乾燥繰り返しにより、水和結晶に変化していったためと考えられる。
ホウ酸系薬剤のデメリット「白華」について
当社ショールームでは、2003年に製造した不燃木材を展示しています。白華防止の専用塗装を施しているため、ホウ酸系の薬剤を使用しても、白華現象が生じていません。
仮に、専用塗装を施さず、着色のみの塗装を施した場合でも、木材上部は直射日光があたり乾燥することで温度と湿度の条件変化が少ないため、白華現象は生じていません。しかし、下部は直射日光があたらず日陰になり、温度と湿度の条件変化があるため、白華現象が生じています。
一方、着色塗装の上に白華防止の専用塗装を施した場合、温度と湿度の有無に関係なく、また、乾燥や温度、湿度などの条件変化があっても、2003年製造品が現在でも白華していません。

